診療内容

加齢黄斑変性症

黄斑は、目の奥の眼底の中心部に存在する組織です。目の前側からはいってきた光が直接当たる場所になり、見える機能が集中している重要な組織になります。見える力の90%以上をつかさどっています。
加齢黄斑変性症は、黄斑が年齢変化で変形し障害を受ける病気です。生活習慣の欧米化にともなって、高齢者で急速に増えており、国内で70万人以上の患者様がおられます
治療が難しくなる患者様も多くおられ、日本では失明原因の第4位となっています。欧米で第1位ですので、今後も増加が予想されています。
男性に多く、喫煙・紫外線・高血圧・遺伝・偏った食習慣がリスクになります。滲出型と委縮型にわかれます

写真:拡大鏡で見る男性

原因

滲出型の原因は、黄斑の下側の組織:脈絡膜から異常な血管(新生血管)が生えてくることです。この発生にVEGFという物質が重要な役割をはたしています。結果、黄斑に出血や水ぶくれ;浮腫を起こし、黄斑を変形させます。
日本人で多いタイプになります。突然大出血をおこし、急激に視力が下がることもあります。片目から始まることが多いですが、数年たってから反対の目に発生することもよくあります。
活動性、進行性がありますが、逆に言うと治療手段があります。
治療をしないと、最終的に0.1程度まで視力が下がることが多く、定期的な通院と、治療を継続することが重要になります。

図:
図:

萎縮型の原因は、黄斑が年齢変化で、枯れるように萎縮することです。活動性は少なく、ゆっくり進行しますが、そのかわり治療に反応しにくいです。失明することはほとんどありませんが、中心が見えにくくなることで、運転やお仕事に支障をきたす可能性があります。また一部ですが滲出型に移行することがありますので、定期受診が必要になります。

写真:

症状

症状は、中心が暗い、部分的に欠ける、ゆがんで見える、大きさが違って見える、色が薄くみえる、などです。中心部分の視野が必要になる、読書、料理、裁縫などに影響がでやすいです。スマートフォンも見えにくくなります
初期の症状は強くないのですが、片目だけで格子線を見ると、異常に気づきやすいです。ときどきチェックしてみてください。

写真: 写真:

治療

滲出型に対する、標準治療は硝子体注射(抗VEGF療法)です

ほかに、レーザー治療・PDT(光線力学療法)という治療法もあります。また重症の眼底出血を合併した場合、硝子体手術を行うこともあります。

図:注射

萎縮型に対する有効な治療法は、残念ながら確立されておらず、サプリメントや生活習慣の改善による進行予防くらいしかありません
サプリメントはさまざまなものが市販されており、インターネットでも購入できますが、ルテイン・ゼアキサンチン・亜鉛・ビタミンなどの有効成分の含有量が重要になります。
眼科を受診して、診断を受けてから、有効成分がしっかり含まれているオプティバリアレチナサポート・オキュバイトなどの製品を、購入されることをおすすめいたします。

図:注射

日常生活でできる加齢黄斑変性症の予防法

まず禁煙してください。喫煙は加齢黄斑変性症の最大のリスク因子です。
つぎに紫外線をさけましょう。外出時には、紫外線カットタイプのサングラスをしましょう。つば付きの帽子もかぶった方が良いです。
食事内容も見直しましょう。肉や油ものは控えめにしてください。
かわりに、ルテイン・ゼアキサンチン・ビタミンC・ビタミンEを多くふくむ緑黄色野菜(ほうれんそう・パプリカ・ケール・アボガドなど)や、果物(オレンジ・グレープフルーツ・リンゴ・バナナ・梨など)や、DHA・EPAといった不飽和脂肪酸を多くふくむ、青魚(イワシ・サバなど)や、亜鉛を多くふくむ食材(蠣・牛肉・豚レバー・卵・カシューナッツなど)をなるべくとるようにしましょう。
また軽い運動を続けることも有効です。散歩やウオーキングで十分です。
内科に定期通院されて糖尿病・高血圧・高脂血症をコントロールをすることも重要です。
加齢黄斑変性症は、治療のタイミングによって、その後の視力が大きく変わります。上述したような中心部分の見にくさや、ゆがみを感じられましたら、早めにご来院ください。

写真:加齢黄斑変性症の発生・進行を予防する生活法
写真:加齢黄斑変性症の発生・進行を予防する生活法
写真:加齢黄斑変性症の発生・進行を予防する生活法

硝子体注射

近年開発された、硝子体注射(抗VEGF療法)は、日帰りで、安全に短時間におこなえることが特徴です。導入以来、加齢黄斑変性症の治療成績は確実に向上しています。現在、加齢黄斑変性症の第一選択の治療法で、治療の主役です。
滲出型黄斑変性症の原因となる、VEGFに対抗する薬剤を白目から目の内部に投与します

図:硝子体注射
図:硝子体注射

実際の治療の流れです。当院では感染症対策を厳重にしています。注射3日前から抗菌剤の点眼をします。注射当日は瞳孔を開きますので、車の運転はできません。
厳重に目と周囲の消毒をおこってから、白内障手術などを行う手術室内で投与します。注射自体は数分で終わり、痛みはほとんどありません。当院では、特に細く、痛みを感じにくい注射針を採用したり、事前の点眼麻酔を頻回におこなったりという、独自の疼痛対策をおこなっております。
注射後、眼帯をつけてすぐに帰宅いただけます。その日は入浴は可能ですが、洗眼・洗髪だけはできません。眼帯をつけて就寝いただきます。
原則翌日来院して、眼帯をはずし診察します。(遠方の患者様、お仕事がある患者様は診察日を遅らせることは可能です。)翌日の診察後は洗眼・洗髪も可能となり、まったく普通の生活をしていただけます。

使用する薬剤は、アイリーア・ルセンティス・ベオビュ・ラニビズマブBS・バビースモがあり、患者様個人個人にあわせて選択しています
アイリーアは効果と安全性のバランスが良いです。ルセンティスは高齢者・全身疾患をお持ちの患者様にも安全に投与できます。ベオビュは比較的強い効果がありますが、ごく一部ですが視力障害も報告されていますので、ほかの薬剤で効果が弱い患者様が対象と考えています。ラニビズマブBSはルセンティスの後発品で、バイオシミラーという新しい製法でつくられています。薬価が他の半額程度と安価のため、経済的負担を軽くできます。バビースモは、効果が持続して、注射の回数を減らすことが期待できます。
当院では、患者様の病状、今まで使用された薬剤、経済的なご負担を総合的に考えて、最善の薬剤選択をしております

写真:検査

残念ながら視力が回復することは多くありません。実際には視力・見え方を維持することが目的となることが多いです。
また、ほとんどの患者様が注射を繰り返す必要があります。これは、注射で病気の活動性をおさえて、黄斑の変形を改善できても、黄斑の細胞がダメージを受けると、細胞自体の再生ができないため、見る機能が低下してしまうためです。
治療は年単位の長期間にわたりますので、精神的にも経済的にも、ご負担が大きくなることがあります。硝子体注射は、薬価が高く、治療費はある程度高額になってしまいます。
残念ながら生命保険の手術給付金の対象にならないことがほとんどです。ただしご本人様の収入によって、高額療養費の対象になる可能性があります。受付にご相談ください。

診療時間

診療時間 日・祝
午前 9:00〜
13:00
○※
午後 15:00〜
18:00

※火曜のみ受付12時まで。また月1回臨時休診がございます。電話でご確認ください。

眼鏡処方、コンタクトレンズ処方、オクルパッドの受付は終了30分前までとなります。

原則予約不要です。
(手術・特殊検査・ハードコンタクトレンズ処方は予約制です。)

緊急手術がある場合、診療時間を切り上げる場合がございます。

コンタクトレンズ未経験の患者様の処方は行っておりません。