診療内容

網膜静脈閉塞症

原因

目の奥の網膜全体に網膜動脈、網膜静脈それぞれの血管が並んで走っています。高血圧・糖尿病・高脂血症など様々な生活習慣病では、血管に動脈硬化という変化が起きます。(高齢になると、病気がなくても動脈硬化は起こります。)
動脈硬化では言葉通り、網膜動脈が硬くなり、接している網膜静脈を圧迫します。すると網膜静脈の血流が悪くなり血栓ができ、せき止められることで、静脈から血液があふれ出します。これが網膜静脈閉塞症が起きる原因です。

写真:初期(単純糖尿病網膜症)

病気の成り立ちは、脳梗塞や心筋梗塞と同じです。
網膜静脈閉塞症は、網膜静脈が詰まった部位によって、網膜中心静脈閉塞症と、網膜静脈分枝閉塞症にわかれます

網膜中心静脈閉塞症は、眼球外部にある、一番太い網膜静脈が詰まった状態です。眼球内部全体の血流が悪くなるため、視力や視野障害の程度が大きくなります。網膜静脈閉塞症の20%を占めます。
網膜中心静脈閉塞症は、血管の閉塞の度合いによって、さらに虚血型と非虚血型に分かれます。虚血型は血管閉塞の程度がつよく、合併症を起こしやすいため視力回復がとても難しくなります。

図:網膜中心静脈閉塞症
写真:網膜中心静脈閉塞症

一方網膜静脈分枝閉塞症は、眼球に入って4本に枝分かれした網膜静脈の1本が詰まることで起きます。その静脈が栄養している網膜だけ障害するため、視力や視野への影響は限定的であることが多いです。網膜静脈閉塞症の残り80%を占めます。

図:網膜静脈分枝閉塞症
写真:網膜静脈分枝閉塞症

症状

網膜静脈閉塞症では、血流が悪くなった網膜静脈から、血液や水の成分が網膜にしみ出るようになります。結果、網膜に出血を起こしたり、水ぶくれ(浮腫)を起こしたりします。
網膜中心静脈閉塞症では、網膜全体に多量の出血を起こし、網膜静脈分枝閉塞症では、詰まった網膜静脈から扇状に出血を起こします。出血や、浮腫のある部位は見えにくくなりますので、かすんだり、視野が欠けたり、視野が黒っぽく見えたりします
実際に視力低下のおもな原因になるのは、網膜の中心の黄斑部の浮腫(黄斑浮腫)です

写真:急な目のかすみ写真:視野が欠ける写真:出血したところが黒っぽく見える

治療

視力低下につながる黄斑浮腫に対しては、硝子体注射(抗VEGF療法)や、ステロイド注射をおこないます。

また、網膜静脈閉塞症を起こして時間がたつと、詰まった静脈に栄養されていた網膜は、酸素・栄養不足(虚血)の状態になります。そうすると、糖尿病網膜症と同じように新生血管が生えてきます。これが、硝子体出血・網膜剥離・緑内障など重篤な病気の原因となってしまいます。やはり新生血管の予防のためにレーザー治療が必要になることが多いです

あわせて出血を予防する内服薬や、網膜の血流を良くする内服薬を処方することもあります。
また根本原因になっている高血圧・糖尿病・高脂血症のコントロールを、内科の先生と連携しておこなうことも重要になります。それらのリスクを高める喫煙をやめることも必要です。脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクも確実に高くなっているためです。

図:注射図:抗VEGF療法

糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症のレーザー治療

糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症が進行した場合、病気の活動性をおさえるためにレーザー治療をおこないます。

レーザー治療の目的は進行予防です。残念ながらレーザー治療で視力が上がることはありません。
この二つの病気では血流が悪くなると(虚血状態)、酸素不足を補うために新生血管という非常にもろい血管が生えてきてしまいます。
新生血管は簡単に破れて、目の内部が血液でみたされてしまう硝子体出血を起こし、突然視力が下がります。
あわせて、繊維組織(増殖膜)に引っ張られることで網膜剥離を起こしたり、目の内部の水の流れが遮断されて緑内障を起こしたりして視力を失っていきます。
レーザー治療は、血流の悪い網膜におこない、新生血管が生えることを予防します。硝子体出血・網膜剥離・緑内障など失明につながる病気の発生・進行をおさえることが目的になります。
網膜剥離のレーザーに比べて、複数回、広範囲に、多く打つ必要があります。
糖尿病網膜症はほとんど両眼を、複数回、数カ月にわたって治療します。一方網膜静脈閉塞症は片眼だけ、1回から複数回治療します。(糖尿病網膜症より、回数は少なく、期間も短いことが多いです。)

図:硝子体注射図:局所レーザー・汎網膜レーザー

したがって眼への負担はより大きく、合併症が出やすくなります。たとえば、視野が狭くなる、色の識別が弱くなる、また黄斑浮腫を起こして視力を下げる、などです。
一連の治療で病気の勢いを抑えることはできますが、糖尿病など基礎疾患のコントロールが悪化すると、眼内の血流が悪くなり、新生血管が再度生えることがあります。その場合は、レーザ治療を追加します。
実際の治療の流れです。1回ごとの治療は、網膜剥離の場合と同様です。
瞳孔を開きますので、お帰りは車・バイクの運転はできません。公共機関やタクシー、または運転できる方の同乗で来院ください。
瞳孔を開く点眼をして20分ほど待っていただき、点眼の麻酔をして、目に治療用のコンタクトレンズをあてて治療開始します。1回の治療時間の目安は5分から10分です。
時に痛みを感じる方もおられます。痛みは強いものではなく、目を押されるような圧迫感、にぶい痛みとおっしゃられます。
痛みを感じるか、感じないか、そして痛みの程度には個人差が大きく、治療をしてみないと分かりません。治療をしながら、痛みの有無・程度を確認させていただき、レーザーのペースを決めます。万一痛みが強いようであれば、休憩をしていただけます。

レーザー治療は、白内障などの内眼手術のような、事前の準備や厳密な生活制限はありません。お風呂、シャワー、お化粧もすぐにしていただけます。お食事、アルコールも普通にしていただけます。
網膜剥離の場合と違い、運動・歩行の制限もありません。
レーザー治療は、日帰りレーザー手術として、生命保険会社の手術給付金を受けられることが多いです。ご加入の保険会社の方にご確認ください。(正式な手術名は網膜光凝固術です)

写真:検査

診療時間

診療時間 日・祝
午前 9:00〜
13:00
○※
午後 15:00〜
18:00

※火曜のみ受付12時まで。また月1回臨時休診がございます。電話でご確認ください。

眼鏡処方、コンタクトレンズ処方、オクルパッドの受付は終了30分前までとなります。

原則予約不要です。
(手術・特殊検査・ハードコンタクトレンズ処方は予約制です。)

緊急手術がある場合、診療時間を切り上げる場合がございます。

コンタクトレンズ未経験の患者様の処方は行っておりません。