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2019.11.01 その他の病気
目薬と温度について
室温・常温・冷所
目薬は、開発時に安定性を調べる試験が義務づけられており、その試験結果に基づいて、保存温度が指定されています。
一般に非常に安定でほとんど分解しない薬の場合、「室温」と指定されます。室温とは、厚生労働省が出している日本薬局方(にほんやっきょくほう=医薬品の規格基準書)によれば、1~30℃のことです。
「常温」というのも日本薬局方に定められており、これは15~25℃のことです。つまり、常温のほうが温度の範囲が狭いのです。ただし、目薬の場合、現時点で常温指定のものは見あたりません。
「冷所」ないし「冷暗所」に保存すると指定されている目薬はかなりあります。
代表的なものに白内障治療薬のカタリン、緑内障治療薬のレスキュラなどがあります。
冷所とは15℃以下とされています。冷暗所とは15℃以下で、かつ光があたらない場所を言います。普通は冷蔵庫に入れておくことになるでしょう。冬でも暖房が入っていると20℃を越しているでしょうから。もちろん気温が低い場所なら冷蔵庫でなくても構いません。
このほか、具体的な温度指定がされている目薬もあります。代表的なのは、緑内障治療薬のキサラタンで、2~8℃と指定されています。
30℃以下は目安
高温側30℃の制限は、実はここではっきり線が引けるという数字ではありません。
温度が高くなるほど化学反応は活発になるので、目薬の成分が分解しやすくなります。
ですから、40℃よりは30℃のほうが望ましいし、30℃よりは20℃のほうが望ましいのです。
ただ、誰にもわかりやすいよう、一応30℃という目安を示しているわけです。
分解のしやすさは本来目薬によって違うはずな のに、どの目薬も同じ30℃になっているのもわ かりやすさを優先した結果で、実はこの数字は多 くの目薬にとってはかなり余裕があります。つまり、長時間でなければ30℃を超えてもさほどの 問題はありません。
そうは言っても、時に60℃以上にもなる車中 に放置するのは避けるべきです。
仮に分解が進んだとしても、濃度が薄くなるだ けのことです。別に有害な物質が生じるわけでは ありません。
その目薬をさしても全く問題はありません。
冷所保存でも持ち歩いてよい
冷所保存の目薬は、室温保存の目薬よりも不安 定で、分解されやすい成分が入っています。
そのため、化学反応が進んで分解しないよう、低い温度で保存しなければなりません。
温度が高くても、変質して有害になるわけでは ありません。
これは「室温保存」の場合と同じです。単に濃度が薄くなるだけのことですから、さしても害になることはありません。
冷所保存というのは努力目標と考えればよく、冷蔵庫に入れておけるなら入れておいたほうがよいですよ、というお勧めです。
2~8℃と指定さ れているキサラタンも同じです。
状況によっては 室温に放置してもやむを得ないと思います。
そもそも、薬局から家に持ち帰る時にはドライアイス など付いてくるわけではないですよね。
それほど 厳密なものではないのです。
時々、「冷所保存」だから旅行中持ち歩かなか ったとか、内科などに入院した時など冷蔵庫がな いのでささなかったという方がいらっしゃいます。
これは本末転倒で、もちろん、室温でかまわない からなるべくさしたほうが良いのです。旅行など で1週間ぐらい持ち歩くのは何らさしつかえあり ません。
室温保存の目薬も冷蔵庫に
室温保存の目薬は冷蔵庫に入れない方がよいの か、という質問もよくいただきます。
まず、「室温」とは1~30℃で、冷蔵庫内はふつう5℃くらいですから、温度上、問題はあり ません。
むしろ、凍結させない限り、低温のほうが分解しにくいので望ましいのです。 その上、封を開けて使い始めた目薬は、まつげ に触れて細菌に汚染されやすいのです。
使い始め た目薬を30日後に検査してみると半数から細菌 が見つかるというデータがあります。低温のほう が細菌の増殖を防ぎ、長持ちします。
つまり、室温保存の目薬も、封を開けたら冷蔵庫に入れておくことをお勧めいたします。(ちなみに、冷所保存の目薬は封を開けなくても冷蔵庫に入れておいて下さい)
凍らせてはいけない
低温側に制限があるのは目薬を凍らせないためです。
目薬は凍ると変質するので、原則として凍結させることは厳禁です。もちろん、冷凍室に入れてはいけませんし、冷蔵室でも、冷気の吹き出し口に目薬を置いておくと凍ってしまうことがあるので注意が必要です。
「室温」が1℃以上になっているのは、凍らせないという意味と考えられます。「冷所」のほうに最低温度の記載がないのは手落ちで、記載はなくとも凍結させない温度と考えるべきです。
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